歌は矯声で踊りは性行為。この胸は官能のためにあり、射干玉の髪はシーツにこぼれるアクセントでしかない。私はそのように定義されて生きてきたから、当然、そのために生まれたのであり、そのようにすることで無条件に愛を享受できるのだと思っていた。幸福なことなのだ。私は物心ついた頃からどう振る舞えば愛されるか、知っていたからだ。

 だから本当に不自由も不幸もなかったのだ。肢体も心も満たされて、液が私を一杯にする。

 なのに、彼だけはそれを否として私を躍らせない。歌わなくていいとも、胸を曝けなくてもいいと言う。ただ少女のように笑って、官能の色もない服を纏っていればいいと言う。

 彼がそうして私から歌を奪うから――ああ、困ってしまったわ。私はもう、きっと二度と歌えない。