難しい事を考えるのは好きでも何でもなかった。ただ難問を解いた瞬間の達成感と、己の矜持が満たされる瞬間は何者にも代え難く心地が良かっただけだった。取り立てて正義感があるでもなし、他人の間違いを正す程の善人でもない。使命感もない。ただ僕は格好良い僕でありたいからそうするだけで、君のほうがおそらく、よっぽど探偵に向いている。

 そう言うと彼はそれでもと首を振った。

「左京さんは素晴らしい探偵です」
「僕の話聞いてた?」

 そう睨めつけても彼は意固地として僕を褒め称えた。まあそりゃそうだな、僕優秀だし。自分の魅力が恐ろしくなってだらしなく伸びてみせても、やっぱり彼はあいも変わらず僕のどこが素晴らしいかと指折り数えていた。

 あのねえ。
 君のその目のとうとく若い輝きは、君にしかないものなんだよ。