出会ったのはそれなりに前になるけれど、その頃から温度のない目であることは知っていた。形だけ綺麗に笑ってみせる、その様は俺が時々するのによく似ていた。なぜそんなふうに笑うのかは、わかるようでわからないままだった。
ところで最近、韋田はよく泣くようになった。俺が何かを言えば絵の具を散らしたように顔の色が変わるから面白かった。そうした日々の中であいつの目が徐々に熱を持っていくのが――忌避すべきだったのに、嬉しかった。硬い氷が溶けたような気がしたのだ。
けれど結局このざまだ。あいつの笑顔が不気味なほどに綺麗なわけは、俺と同じわけではなかったうえに、いつのまにか俺のまで跡形もなく溶けていた。おまけに気付けば迷い込んでいたのは貂の住処と来たから、振り回されていたのはどっちだったのだろう。
…どうしよう。