投稿者: nzeenz61 / 144 ページ
「チェックメイト」「あら」 細道の操るキングが、芥の眼前…
アルバートはよく笑う。まるでそうすることが正解だと彼が断じているかのように、ダリアには見えていた。 笑顔の裏で怒っているのだろうと察した事は幾度かあったが、彼が泣く姿をとんと見た事がない。かといって感情を押し殺す男でもないのだ。”そうした方がよほどましだという判断なのだろう”ーーダリアはそんなふうにアルバートのことを見ていた。
図ったように鼻歌が止んで、三人はまた窓の外を見た。
冬の東京は、なおもスピードを増すように、いまだ街灯りを受けて輝いている。
オレは咄嗟にこう紡ごうとした。うん、めちゃくちゃ美味い。でも出てきたのは酒と煙草で焼けた息だけで、やっと頷くオレのことを、ただ丹内は見ていた。
微笑んでいたのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。顔を見る前に頭をぐしゃぐしゃに撫でられたから、それはもう、確かめようがなかった。
獲物だって、逃げ惑い、食らいついてくれた方がよほど狩人にとってはスリリングで都合が良く、焼き付かんばかりの思い出にさえなった。常に鳴刺はそんな獲物を欲する狩人で、怪物だった。