タグ: 一ノ瀬零門1 / 2 ページ
一ノ瀬はそうっと有元の顔を伺った。そのくちもとが小さく笑っていた。
「だから、すみません、俺、年末年始はいっしょにいられないんですけど」
「——なにを言うかと思えば。そんなあたりまえのことを私に訊くな」
許可なぞ取らずとも帰ればいい。そう返すと有元は、いささか照れたかのように首をすぼめて頷いた。
羽虫の戯言との約束など守ってやる義理はない、それでも、それなのに、有元はささやかに笑った。
――約束、守ってくれてるんですね。ありがとうございます。うれしい。