終わり これから

イツ花「やっと天界への報告が済みまして 落ち着いた頃合いかと思います」
イツ花「ではでは皆様 改めまして…」

イツ花「悲願達成 おめでとうございます!!!」

みんな「かんぱーーーい!!!」

イツ花「今日は大工の熊五郎さんとかお隣の皆さんとか武器屋の主人にも来ていただいてます 皆でバーンとォ!飲み交わしましょう!」
雲竜「一族関係ねーーー!」
冬「まあまあ、これまで様々な形で支えてきてくれたんだろ?」
熊五郎「そうだぞー、数年前に染井家の増築を担当したのは俺の組合だからな!ワッハッハ!」
冬「ふふふ、それでただ飯食らいにきたというわけか」

天城「いいじゃない、人がいるほど宴は楽しいものだわ それに…いい男がたくさんいるじゃないの♡」
雲竜「ぎゃーー!!!」
茜「あははは!」

朱雀「…当主様?」

冬「どうしたんだろう枝垂 厠かな?」
天城「…………んなわけないでしょ ほんと鈍感!アホ!」
冬「えっ 何で?」
天城「枝垂の兄様なりにいろいろ思うとこがあったんでしょ」
冬「??」

天城「朱雀兄様」

天城「ちょっと迎えに行ってやんなさいよ 桜ちゃんこっちで見てるから」

枝垂「………」

枝垂「ほんとに額のイボ消えてる…」

朱雀「当主様?」
枝垂「うわっ!驚かせんなよ!」

朱雀「どうしたんだ?主役がいなくては宴も盛り上がらんだろう」

枝垂「ははは 主役って…みんな主役みたいなもんだろ?」
朱雀「しかし、やはり当主というのは」
枝垂「わーってる わかってるって…」

朱雀「…何かあったのか?」

枝垂「…いや なんもないけどさ」

枝垂「ただほら おれ結構がむしゃらにやってきたから…
なんていうかさ」

枝垂「これから先どうしようかなって」

枝垂「お前は知ってると思うけど おれさ、ずっと父ちゃんの遺言に従って生きてきたんだ
おれ あんまり頭よくないから
それ以外に何したらいいかもわかんなかったし」

枝垂「おれも死にたくなかったけど
いざ朱点を倒して、呪いが解けてみたら
…これからまだまだ生きられるんだろ?おれたちは
死ぬまで、何をして生きていけばいいんだろうって」

枝垂「…ってな!なんだか らしくないよな!」

朱雀「………」

朱雀「当主様…いや 枝垂 俺は…」

朱雀「俺にもはっきり言って趣味なんかないし
それを言われちゃ俺もこれから先何をしたらいいかわからないんだが」
枝垂「ははは」

朱雀「武士として生きていくとか 神職にでも就くとか
多分いろいろ道はあるんだろう
それに…俺達は染井の家の者だし…職には多分困らん
帝にも気をかけて頂いているしな」

朱雀「ただ…すまん 俺も敏い方ではないのだが
お前の言っていることはつまり そういうことではないのだろう?」

枝垂「…まあ そうだよ」

枝垂「まだまだ生きられるとは言っても いずれおれたちは死ぬし…
その時、やっぱりきっとおれは まだ死にたくないって思うと思うんだ
10年先か 20年先かわかんないけど
人生が何年でも やっぱり終わってみたら短かったって思っちゃう気がするんだよ」

枝垂「だから早めに決めねーとなって思ってんだけど…」

枝垂「生き急ぐ癖でもついちまったのかな」

朱雀「…まあ 俺達は鬼と戦う以外の生き方を知らないからな
そうなってしまうのも無理はないと思う」

朱雀「…俺の個人的な話をするが」

朱雀「俺は…正直短命の呪いとかどうでもよかったんだよな」
枝垂「えっ!」

枝垂「お前それ本気で言ってんの?」
朱雀「大真面目だ」
枝垂「なんで?そんなに強いのに?」
朱雀「生存欲に強い弱い関係ないだろ」

朱雀「それより
俺はお前が心配だったよ」

枝垂「おれが?」

朱雀「お前すごく期待されていたろ」

朱雀「はっきり言ってお前は戦に向いてない
それは先代も母上も承知だったろ?」

朱雀「お前自身もよくわかっていたはずだ」

朱雀「けれどやらなければならなかったし
結果的に先代はお前に当主の指輪を託した」

朱雀「だがお前の代で朱点に臨むかどうかの選択は
お前自身に委ねられたものだった」

朱雀「お前はそこで蹴ってしまってもよかったんだ
誰もきっとそれを責めなかったよ」

朱雀「…でもお前は、決断したろう
自分の代で終わらせると」

朱雀「お前があの時覚悟しなければ俺達はこうして生きていなかった
きっと冬兄様も今頃死んでいたはずだ」

朱雀「今になって思うが 先代は気付いてたと思うんだ
お前は弱くなどない」

朱雀「俺もそう思う」

朱雀「お前は代替わりの時 俺の方が当主に向いてると言ったが
それは違う」

朱雀「心配するな お前は強い
これからの人生 どこにだって行けるさ…
それでも不安だというのなら」

朱雀「俺がいる 冬兄様や天城もいる
雲竜や茜、綾 それに桜がいるだろう?」

朱雀「みんなお前が当主でよかった そう思ってる」

朱雀「みんなを代表して俺から言わせてくれ
ここまで連れてきてくれてありがとう」

枝垂「…そんな…」

枝垂「なんにもしてねーよ おれは…
最後だって決めたのは冬兄だし
おれの決断が遅かったから四季姉も助けられなかった…」

朱雀「そうだとしてもだ
俺はお前に仕えられたことを誇りに思うよ」

朱雀「今日の酒は上等だって イツ花が言ってたぞ
飲まなきゃ損だ
全部あいつらに飲まれてしまう」

枝垂「……」

朱雀「こんな上等な酒が飲めるのは もしかしたらこれが最後かもしれないぞ?
例えこの先長い人生が待っていたとしてもだ」

枝垂「……そうだな!」

枝垂「朱雀!」

枝垂「乾杯!