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1945年、アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスは家族とともに、収容所の隣で幸せに暮らしていた。どこにでもある穏やかな日常。しかし、壁ひとつ隔てたアウシュビッツ収容所の存在は、音や煙、何気ない会話や気配から着実に伝わってくる。
壁を隔てたふたつの世界。家族と収容者にはどんな違いがあるのか?

こんな飛び道具みたいな映画、存在していいの!?!?
すごい映画体験だった…
#drama

タイトルとポスターよさげやんと何も調べずに観始め、すぐに悟る……これ、ホロコーストの映画だ!!
「アウシュビッツ収容所のすぐ隣に住んでる家族の話」というガチヤバ映画なんだけど、映像ではまったく収容所の内部やユダヤ人の様子は映らない。ただひたすら隣に住んでる家族を撮ってるだけ。
家族の暮らしぶりは丁寧で上品でまさに理想といっても過言ではないんだけど、それなのに手汗が止まらないのはそれとなく映る不穏なアイテムや会話、そしてなによりのせいだと思われる。
耳を澄ますと聞こえてくる小さななにかの駆動音や人の悲鳴、これがもう一生観客の胃にスリップダメージを与えてくる。映像は全然怖くないのに
徹底して「見せないこと」を利用して「想像させる」作りになっているのがなんとも飛び道具的で、体感したことがない映像体験。すげぇ~っ!

この「想像力に徹底して頼る」構造そのものにも意図があるんだろうなあ。たとえば収容者もまた人間であるというあたりまえの想像を欠いてしまった主人公たち(そしてかつてのナチスドイツ)への強烈なアイロニー…とか?

言うてこの映画は主人公たちを悪逆非道ではなく、むしろどこにでもいる普通のひとたちとして描いてるからこそ真に迫る。主人公なんて上司と仕事との板挟みになって揉まれるサラリーマンとなんも変わらない。
だからこそこの歴史に残る残虐犯罪は誰にでも実行可能なものなのかもしれない、現代に生きる我々にも、という逆説的な説得力を持っている。すげえ~~~~この映画

そしてそれをまざまさと痛感させるオチがすごすぎる。
急に現代にスパンするラストで一気にこっちまで巻き込んでくる。お前らが今立ってる歴史はこれと地続きなんやぞってことをとんでもない演出でわからせてくる。
(そしてその見せ方自体はむしろとても「素朴でシンプルな、特別味のないもの」だからこそ胸につまる…)

主人公のカットから急に現代に飛ぶ演出に関してはこの動画の考察がかなり腑に落ちた。いい動画

そしてこのスタッフロール!!スタッフロールのBGM、やばすぎる!!!この映画は本当に音がすごいんだけど、最後の最後までそれを骨身に刻み込んでくる…。
ホロコーストの歴史を音で表現したらこんな感じなんだろうなっていうエンドロールだった。

あとから知ったんだけどカンヌのグランプリ獲った映画らしい。そりゃすごいわ。
いや~~素晴らしいものを観た。かなりキツいしこたえる映画だけど、よかったら観てほしい…。
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